SELECTOR 05
鴫原磨音 & 大谷亮介(解体業)
HIPHOPのドゥーラグのように
お洒落と不良マインドを込めて
家の壁や柱を大ハンマーで破壊していく光景は、近くで見るとさながら格闘技のようなインパクトがある。
その分粉塵やアスベストも多く吸い込む解体屋に必要なのは、バラクラバだ。
まるでUKラッパーのようなスタイルで現場へ向かう姿は、街の不良の肖像そのもの。
綿100%のタフさと
動きやすい機能性を纏う
解体屋は職人の中でも体を動かす方だし、ガラ出しなどの作業で服に傷がつきやすい分、ユニフォームはとにかくタフな素材であることが重要。2人ともTシャツは会社支給のユニフォームとのことなので、一番自分のこだわりが宿るのはパンツのようだ。「とにかくすぐ破れちゃうので、できるだけ丈夫なものを選んでいます。ガスを使って溶断してたりすると火の粉も飛んできますし、解体屋は綿100%がマストです(鴫原)」。「自分はとにかく楽なのが一番大事なので、ユニクロのスウェットを履いています。安かったら1000円台で買えますし、使い捨ての感覚で履いてます」。たまに”ほんとうの職人は作業着が汚れない”なんて言葉を聞くけれど、大谷さんが「服が汚れてないやつは仕事してないのと一緒」と言うように、そんな理屈は解体屋には通用しない。タフな環境だからこそ、オシャレを楽しめる部分も少なく、鴫原さんはパンツにつけたキーリングなどのアクセサリーを付けてアクセントを楽しんでいるとのこと。また、アスベスト解体をはじめとする作業中の粉塵を防ぐために、マスク=バラクラバの着用も欠かせない。そして、今回の特集の趣旨とは少しズレるけれど、インタビューを聞く中で大谷さんが教えてくれた言葉が忘れられない。それはすべての職人を肯定するようなメッセージで、いまの世の中の常識に疑問を持つ人にぜひ耳を傾けてほしい価値観だ。「職人って一番人生楽しめるんじゃないかって思ってるんです。服装もある程度自由だし、髪型も自由、犯罪歴があっても大丈夫だし、刺青もみんな入ってるよね。仕事さえしていれば、プライベートで問題を起こしたからっていって会社をクビになるわけでもないし。もし会社に入れなくなったとしても、気づいたら隣の会社で働いてたりしますよね(笑)だから、職人はある意味一番自由で、幸せ者なんじゃないかと思います」。そんな言葉の背景には、解体屋=不良の世界で生きる大谷さんだからこそ身についた職人の優しさも感じられた。
TS DESIGNの代表的なアイテムであるバラクラバ。また、柔軟性とストレッチ性に優れるTS TEXレインウェアは、雨天時にはもちろん普段着としても着たくなるようなデザインと機能性を持つアイテムとなっている。