VOL.2 藤井製瓦工業株式会社

瓦文化の心と技を受け継ぐ

広島県福山市のとある建築現場を見上げると、屋根の上で眩しい日差しを受けながら仕事に励む職人たちがいた。彼らが身に着けているユニフォームやヘルメットには、特徴的な「FUJII KAWARA」のロゴが。「藤井製瓦工業株式会社」は、創業者の藤井九一郎が今からおよそ一世紀前に福山市御幸町で瓦を焼き始めた。二代目、三代目と瓦づくりの心を受け継ぎながら、現在では瓦だけにとらわれず、一般住宅、ビル、店舗、寺社など、さまざまな建築物の屋根専門施工会社として、建築業界の一端を担っている。取材時に作業に取り掛かっていた三箇所の現場に伺わせてもらった。

冷たい風の吹く冬場の屋根の上で、職人たちが黙々と瓦を屋根に上げていく
平らな洋風瓦は最近の住宅のデザインにもマッチし、人気なのだそう

瓦文化の発展と若手育成に貢献

一般的には、一人前の瓦屋根職人になるまでに10年近くかかる。藤井製瓦工業(株)では、2〜3年で一人前の職人になってもらう為に仕事が出来ない雨の日は休むのでは無くて、社屋に常設している研修スペースで技能資格の取得を目指し、座学も含めて実践練習を行っている。「瓦屋根は、災害が多い地域には耐久性が悪いという間違った解釈をテレビ等の報道で植えつけられていて、瓦屋根の人気が落ちているのが残念です。」と、藤井社長から寂しそうな一言が。本来、瓦は日本の気候に合った屋根にする為に重要な役割を担うもの。しっかりとしたメンテナンスをすればランニングコストを最小限に抑えられ、耐久性もとても強い。そして何より瓦屋根にしか出せない重厚感や雰囲気は唯一無二のもの。この文化を守り、継承していく事が使命だと藤井社長は感じている。「金属の屋根も良いですが、年々値上がりもしています。瓦屋根を是非検討してみてください。」と、藤井社長は職人たちを見つめながら微笑んでいた。

技能資格を早く取得出来るように本拠に練習スペースを常設
一人前の職人を目指せる体制を整えている

ガルバリウム鋼板屋根の施工現場
屋根の面積ピッタリに貼り付けていく為に、職人たちの知恵や技術が詰まっている

社員の要望に沿ったユニフォームを

ティーエスデザインのユニフォームに一新したきっかけは、社員からの制服を変えて欲しいという要望からだった。それまではただ単に仕事服として着るものとして特にこだわってはいなかった。そんな中、縁あってティーエスデザインのファンの社員から直接コンタクトがあり、ティーエスデザインの展示会場に足を運び、全商品の中から自分たちに合ったアイテムを選び制服にした。「若手社員や新卒で入って来る十代の子たちも、制服がスマートなデザインで動きやすいしとても好評です」と嬉しい言葉をいただいた。

藤井製瓦工業株式会社 藤井孝浩社長
瓦屋根の良さを発信し、職人たちのサポート体制を強化している

ブランドのファンということもあり快く撮影に協力していただいた
現場のリアルな声を聞ける貴重な時間だった

時代に寄り添う瓦

近年、サスティナブルな取り組みや日本由来のものが注目を集めている中で、瓦屋根の家は照り返しが少なく家の温度や湿度を適正に保ち、空調等の電気使用量を抑える。また、補修の際は全て張り替えて廃棄するのではなく、補修が必要な箇所だけを補修し、廃材となる瓦は吸水性が良いので砂利や古瓦として再利用も出来る。我々が現在推進している取り組みの中に、「TSSN "TS SAVE NEXT"」という環境に配慮したプロジェクトがある。アップサイクルを目指し、素材の再利用をして未来へと繋げていく考え方は、この瓦屋根の文化からも学べる事が出来た。屋根の事には責任を持って家主さんをサポートし続けていく藤井製瓦工業株式会社の姿勢は、私たちも職人を衣の方面からサポートする立場として再認識していかなければならないと感じた。

廃材となった瓦を砂利として再利用する「びんごテコラ」
吸水性が良く、水たまりやぬかるみ対策として活躍する